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まだ寝ているひとみを、ねんねこにくるんでおんぶして、主人に上の子(二人)を頼んで、六時二十分ごろに家を出ます。六時四十六分の汽車に乗り、舞鶴駅に九時二分に着きます。
学校まで歩いて十五分ほど。帰りは舞鶴駅を四時十分に乗り、家の近くで買物をして帰るので、家に着くのは六時半でした。
教育相談のときは、あんなに楽しそうにお勉強をしていたのに、幼稚部になったらどうしたわけか、毎日、ほとんど一日中、泣いていました。一ヵ月ぐらいから少しはおさまりましたが、勉強するまでにはいきませんでした。
何度、休ませようかと思ったかしれません。そのたびに先生から、「チャンスは何時くるかわからないから、頑張るように」と、何度も励まされました。挫けそうになるたびに、近所の人たちの冷たい言葉とか、はたぐち先生を思い出しながら、頑張ってきました。
ひとみも、少しずつ先生にも慣れて、半年後には言葉もできるようになりました。もちろん「あいうえお」からです。ほとんど休むことなく一年は終わりました。
二年目からはすっかり落ちついて、勉強ができるようになり、言葉も少しずつ増えていきました。初めて、「お母さん」と言ってくれたときは、嬉しくって眠れませんでした。そのときは夜になっても、ひとみを寝かせませんでした。それというのは、「寝てしまうと忘れてしまい、お母さんと言ってくれないのでは」という思いがあったからです。でも朝起きるなり私の方から、「この人はだれ」と聞くと、大きな声で、「お母さん」と言ってくれました。嬉しくて涙が止まりませんでした。それからは、めきめきと言葉が出るようになりました。

 

 

 

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